第7期講義議事録


第8回講義

  • 日時: 2015年11月21日(土) 13:30-16:50 (第2部17:00-19:00)
  • 場所: 大阪大学中之島センター
  • 講義題目: 「「国に養ってもらう博士」 から 「国を救う博士」 へ」

科新塾・中之島第7期の第8回講義は、急遽予定変更により、塾生、賛助会員の皆様、そして河田先生のすべての参加者による発表会とさせていただきました。講義の最初では、河田先生より科新塾を立ち上げた想い、お金を儲けるというのはどのようなことを意味するのかについて、改めて語っていただきました。その後、参加者全員で発表会を行い、自らの生い立ちや夢について自由形式で発表し、それについての議論を行いました。形式・内容ともに個性的な発表ばかりで、皆、時間も忘れて議論していたことが本当に印象的でした。当初は第一部でフリーディスカッションまで行う予定でしたが、皆さんの発表と議論が大変盛り上がったため、一部は発表会のみとし、ディスカッションは場所を移して懇親会場で実施致しました。

 

 

第7回講義

  • 日時: 2015年10月31日(土) 13:30-16:50 (第2部17:00-19:00)
  • 場所: 大阪大学中之島センター
  • 講演者: 梅村聡様 (医師、科学者維新塾塾長)
  • 講義題目: 「医師から国会議員へ」

科新塾中之島第七回講義では、科学者維新塾塾長の梅村聡先生にご講演頂きました。先生は大阪大学医学部を卒業後、現在医師としてご活躍されています。ご講演の前半では、医師を志した経緯や参議院議員になった際のエピソードを中心にお話し頂きました。糖尿病をご専門にされている背景には、糖尿病で若くして亡くなってしまう親戚が多かったことを挙げられました。毎年ホノルルマラソンに出るのは趣味ではない、と仰っていたのが印象的でした。参院選に立候補した理由としては「偶然と巡り合わせ」を挙げられました。始まりは阪大病院勤務の頃、視察に来た議員さんと医療ミスについてディスカッションしたことだそうです。30歳まで医学を学んできて、全く違う分野に行くことは今までの知識を無駄にしてしまうのではないかと考えたそうです。それでも、医者だけをやっていては会えなかった人に会えたなど、やってみて良かったと思えることは多いと話されていました。

後半では、臓器移植法の改正やがん対策、生活保護など関わってこられた中でも印象深い案件について語って頂きました。法案の改正のために他の議員の事務所を回って歩いたことや、がんに対する体験談など実体験に基づく話をされました。講演の最後には、現在夜10時までの診療ができるクリニックを作ったことや、女医さんの活用といった現在進行中の試みについてご紹介頂きました。

ディスカッションでは、「日本は積極的安楽死を法的に認めるべきである。是か非か」をテーマにディベートを実施しました。賛成側は、家族の同意の下に安楽死を行った医師が逮捕されるなど、現状では生命の自己決定権を保障できないことへの疑問や医療費の問題を取り上げました。一方否定側は人命軽視へ繋がることへの危惧や苦痛の定量性を争点としました。多くの塾生にとって初めてのディベートでしたが、時間的制約のある中で両グループとも積極的に論争に取り組んでいました。個人の意見は論争によりシャープになることもある一方で、当初とは反対の意見がもっともらしく思えるようになった人もいるようで、思考の面白い点の一つであるように感じました。ジャッジの皆様からは、「法的に」という言葉は非常に強い意味を持つため、法で縛ることなく裁量性を残しておくのも一つの方法である、との意見を頂きました。また日本と海外との制度の違いについて、特に日本人が(安楽死を求めて)海外に行くことや、逆に海外から人が来ることへの是非についても議論されました。

本講義を通して、社会問題や政治的な課題に触れ、普段馴染みのない政治家というキャリアについて考えを巡らせることができました。後半のディベートでは積極的に対立意見を聞き、論理的に考え、かつ効果的に訴えることの重要性を見つめ直すことができました。

 

第5回講義

  • 日時: 2015年8月22日(土) 13:30-16:50 (第2部17:00-19:00)
  • 場所: 大阪大学中之島センター
  • 講演者: 牧慎一郎様 (天王寺動物園園長、改革担当部長)
  • 講義題目: 「中央官庁から動物園への転身」

第5回講義では、大阪市立天王寺動物園長 兼 大阪市建設局動物園改革担当部長の牧慎一郎先生に講演をいただきました。牧先生は、大阪大学ならびに大学院で神経生理学を専攻され、修了後は国家公務員と して種々の省庁で業務を経験され、昨年度からは3年間の任期で動物園改革担当部長として活躍されています。

講演の前半では、中央官庁での業務とそのやりがいについて非 常に丁寧に語っていただき、後半部分では動物園めぐりを始めたきっかけから、NPO代表としての活動、大阪市に転職した経緯、動 物園のあり方などについて幅広くお話しいただきました。中央官庁を退職し、任期付ポストに単身赴任で飛 び込む思い切りの良さには、塾生一同刺激を受けました。

その後のグループワークでは、「どうする?どうなる?動物 園」というテーマで、全員での円座ディスカッションを行いました。まず塾生に動物園について一言ずつ語ってもらったところ、水族 館でのボランティア経験者や、東北の動物園まで足を延ばした動物園好きから、動物園も動物も嫌いな塾生まで幅広くいました。議題 は、塾生の幅広い興味と牧先生の知識の広さを反映し、経営感覚・組織論、世界の動物園と文化の関係、動物にとっての幸せ論にまで 及びました。

直線的でないキャリアの可能性と、情熱と興味を持って取り組 めることの大切さを強く感じた講演でした。

 

 

第4回講義

  • 日時:2015年7月25日(土) 13:30-16:50 (第2部17:00-19:00)
  • 場所:大阪大学中之島センター
  • 講演者:上原雅行様 (信州大学)
  • 講義題目:「基礎研究者(博士人材)のキャリア開拓  ~パラレルキャリアのすすめ~」

科新塾中之島第7期第4回の講義は、18名の参加者にお集まりいただき、大盛況の内に無事終了致しました。ありがとうございました。

塾頭補佐・山下による講師の上原雅行先生の紹介の後、講義前半では、「基礎研究者(博士人材)のキャリア開拓  ~パラレルキャリアのすすめ~」と題し、上原先生の歩んでこられた「パラレルキャリア」についてご講演いただきました。「パラレルキャリア」とはピータードラッカーが提唱した言葉で、"組織と個人、両方の可能性を模索する新しい働き方。組織だからできる大きな仕事と、個人だからできるスピード感のある仕事を融合させられる生き方。"なのだそうです。上原先生は企業での研究活動のほか、信州大学にも籍を置いて論文の執筆や、個人で生命科学実験教室を立ち上げ・運営を同時並行でこなしておられます。それだけ多くのタスクをどう処理するか、コツを聞くと、

  1. メリハリをつけてそれぞれのタスクを行うこと
  2. 陳腐化しない技術を身につけていることを意識しモチベーションを高く保つこと

だそうです。

パラレルキャリアを歩むことで、新たな生きがいを見つけられたり、本業に活かせるようなスキルが身についたり、人とのつながりがどんどん広がったり。博士号取得者が溢れる世の中だから、今こそパラレルキャリアなのだというご講演をしていただきました。

後半は、参加者全員で博士はどうあるべきか、科学者維新塾はどうあるべきかについてディスカッションを行いました。

博士がどうあるべきかというテーマでは、どんな博士が求められているかを考えながら理想像を模索しました。税金をもらって研究をする以上、社会への還元を意識して、活動をしなければならないということを改めて認識させられました。また、企業にとっては即戦力になり、そこでリーダーとして新たな価値を生み出せるような人材が必要とされているではないかという意見も出ました。

「博士である自分はどんなことができて、どんな価値があるのか」を企業や社会相手にわかりやすく説明できることが大切だと学びました。

講義後の懇親会では、塾生個人個人の特技や特徴を書いた強み弱みカードを用いて、「どうしたらもっと成長できるか」を講師の上原先生や塾長の河田先生のお話も聞きながら考え、交流を深めました。

 

 

第3回講義

  • 日時: 2015年6月20日(土) 13:30-16:50 (第2部17:00-19:00)
  • 場所: 大阪大学中之島センター
  • 講演者: 宮内諭様 (株式会社ニュートンプレス編集部)
  • 講義題目: 「科学雑誌『Newton』とは」

第三回講義は株式会社ニュートンプレスの編集部より宮内論様をお招きしてご講演をして頂きました。宮内様は科学者維新塾の中之島校・第二期生であり、初のOB講師となりました。前半の講義では、サイエンスライターとして、サイエンスに携わるキャリアパスを示していただきました。後半はライティングに関するグループワークを行い、読者を意識した上での伝えることの難しさを学ぶことができました。今回は、15名の方が参加され、密な議論を交わしました。みなさま、ご参加ありがとうございました。

前半の講義は、宮内様の半生を振り返りながら、サイエンスライターになるまでの経緯をお話し頂きました。宮内様は博士後期課程在籍時にいろんな分野の科学知識を幅広く知ること、伝えることが好きだと気付き、サイエンスライターとしての仕事を選択されたそうです。サイエンスライターは、常に様々な科学に触れることができることが一つの大きな魅力であると感じました。執筆される際には、紙面や文字数が決まっている中で、いかに書きたいこと、伝えいことを意識するのか、本を通じてどうやって読者と対話できるのかを常に意識されているそうです。

後半のグループワークでは、事前に塾生から提出していただいた、1000文字程度の最新の科学に関する記事を、宮内様の講義を受けてどのように改善すべきかを、グループで議論しました。議論の最中に、専門外の分野を分かりやすく伝えるためにいかに知識が必要か、最初の数行で読者をひきつけることの難しさ、オリジナリティーをどう出していくかなど、「伝える」、「表現する」上でのポイントを実際に、塾生間で認識することができました。

 

 

第2回講義

  • 日時: 2015年5月23日(土) 13:30-16:50 (第2部17:00-19:00)
  • 場所: 大阪大学中之島センター 302講義室
  • 講演者: 高橋修一郎様 (株式会社リバネス代表取締役社長COO)
  • 講義題目:「科学技術を軸に 新しいビジネスを生み出す」

科新塾・中之島第7期の第2回講義は、株式会社リバネスCOOの高橋修一郎様を講師に迎え、総勢20名の参加者の皆様とともに大盛況の内に終了いたしました。お忙しい中ご参加いただいた皆様、本当にありがとうございました。 

高橋様は、昨年度科新塾で講演いただいた丸様とともに、学生時代に株式会社リバネスを立ち上げられ、科学教育や、科学の振興に関する事業に取り組んでこられました。前半の講義は、リバネス立ち上げ時から今に至るまでの過程を、高橋様の経験を交えて紹介いただきました。社員ひとりひとりの夢を、どのように事業として展開させていったか、経営者の視点で語っていただきました。

後半は、4つのグループに分かれ、取り組みたい事業についてディスカッションを行いました。チーム分けは、事前に宿題として考えていただいたプランを、一人当たり持ち時間30秒で発表し、気に入った人とチームを組むという方式をとりました。リバネス社員も実践している0から1を生み出す手法、QPMI(Question-Passion-Mission-Innovation)サイクルを参考に、自分たちが疑問に感じていること、情熱を感じられることについて、どのようにして事業として成立させるかを考えました。

 

第1回講義

  • 日時: 2015年4月11日(土) 13:30-16:50 (第2部17:00-19:00)
  • 場所: 大阪大学中之島センター 201講義室
  • 講演者: 河田 聡 (科学者維新塾塾長、大阪大学教授)
  • 講義題目: 「科新塾を立ち上げた理由、想い」

科学者維新塾(科新塾)2015・中之島第7期の第1回講義は、30名の参加者にお集まりいただき、大盛況の内に無事終了致しました。お忙しい中ご参加いただいた皆様、本当にありがとうございました。 

塾頭の畔堂による当塾についての説明の後、講義前半では、塾長の河田聡先生より講義題目『私が科新塾を立ち上げた理由、想い』について、1.カラオケ、2.日本を救う、3.適塾と諭吉、4.博士とは、の4テーマを通して講演を頂きました。価値のあるものにはお金がついてくる。博士はその価値を生み出せる存在だという話。かつて日本が窮地に陥った時に、福沢諭吉はじめ、大阪・中之島にあった適塾の生徒が活躍した話や、「イノベーションを実現したソニー(盛田昭夫)やApple(Steve Jobs)」と「被雇用者(サラリーマン)が支配するオーナー不在で誰も決断しない現在の危機的な組織」の話。そしてこの日本の窮地を救う独立自尊の志士としての博士の役割、「博」という字の意味、その夢の持ち方について熱い想いを語っていただきました。また、ご講演の最中でも、参加塾生から賛否両論活発に意見が飛び出し、終始インタラクティブな講義であったと思います。 

後半は、参加者全員を5グループに分け、『好きなことをやり続けるには?・夢を実現するには?』というテーマについてグループディスカッションを行い、グループごとに発表を行いました。「好きなことなら意識しなくても続けられるのでは?」といった意見や、「好きなことや夢がない、どうすればよいのか?」といった意見まで、前半の講義同様に、グループ間で活発な意見が飛び交いました。

 講義後の懇親会にも、ほとんどのメンバーがそのまま残り、懇親会の2次会まで大いに盛り上がりました。次回以降も、魅力的な講義を提供するだけでなく、塾生一人一人が一歩踏み出して行動を起こせるよう、活発な活動を展開していきます!!本年度もどうぞ科新塾・中之島をよろしくお願いします。

 

 

第6期講義議事録


第8回講義

  • 日時: 2014年12月6日(土) 13:30-16:45 (第2部17:00-19:00)
  • 場所: 大阪大学中之島センター 講義室
  • 講演者: 緑川賢司様 (株式会社ミナロ 代表取締役)
  • タイトル: 「次世代日本の中小企業経営を考える

~中小連携が生み出したコマ対戦とは~」

12月5日(土)の科新塾では、株式会社ミナロ 代表取締役・全日本製造業コマ大戦協会 会長の緑川賢司先生にご講演いただきました。緑川先生は、リストラされた後起業され、技術力とインターネットを活用した情報発信力を武器に事業を展開される傍ら、コマ大戦を仕掛けることによって製造業界全体の活性化・世界規模でのネットワークづくりを進められておられます。

前半の講義では、会社設立の経緯や特色、製造業・中小企業に対する思い、そしてコマ大戦の“ビジョン”を語っていただきました。自らの工場で作製した商品(作品)の写真と一緒に、「現場を楽しく」というコンセプトを説明されている時の語り口が本当に楽しそうで、それが何より印象的でした。緑川先生は、これまでに科新塾でお招きしてきた先生方とは大きく異なる経歴をお持ちですが、塾生へのメッセージという点では、驚くほど相通じるところがありました。例えば、「思考は現実化する」や「ビジョンがあれば大丈夫」といった言葉は、第6回講義(10月)にお招きした丸幸弘先生の提唱される「QPMIサイクル」と根をまるごと共有していると感じました。

後半のグループワークでは、【博士版のコマ大戦を作る】というテーマの下、日本中もしくは世界中の博士を団結させ世間にアピールできるイベントや方法を考え、「独身博士マッチングイベント」、「町おこしコンペティション」、「なんでもNo.1」といった個性あふれる企画が登場しました。一方で、イベントの着地点を設定する出口戦略や、持続的・発展的に行うための経済的な肉付けはどのチームもあいまいなままであり、10月のグループワークから引き続いて『お金への意識の希薄さ』という課題を残す形となりました。

また懇親会では、第一回 コマ大戦 科新塾場所を開催しました。王道と呼ばれるシンプルなコマから、開くコマ、軸なしゴマ、逆さゴマといった様々なコマの動き・戦いを見ながら大いに盛り上がり、今年度最後の交流を楽しみました。

 

 

第6回講義

  • 日時: 2014年10月4日(土) 13:30-16:45 (第2部17:00-19:00)
  • 場所: 大阪大学中之島センター 講義室
  • 講演者: 丸幸弘様 (株式会社リバネス代表取締役CEO)
  • タイトル: 「理系博士が科学教育・研究支援で起業する」

10月4日の科新塾では、株式会社リバネスの丸幸弘先生を講師としてお招きしました。

大学院生時代に起業されてから、出前授業をはじめとしたさまざまな形のサイエンスコミュニケーションを“ビジネス”として展開されています。

前半は丸先生の生い立ちやなぜ博士課程に進学した理由、今リバネスでどんな事業をしているかについて伺いました。研究者としての考え方とイノベーションを作るためのサイクル(Question-Passion-Mission-Innovation)は似ていて、リバネスでもその考え方のもとに行動しているそうです。サイエンスコミュニケーションを行っている団体は数多くありますが、リバネスでは“ビジネス”の形にすることによって資金を確保し持続可能な仕組づくりを可能にしているようでした。また、研究者支援にも力を入れられており、「リバネス研究費」という独自の制度を設けていらっしゃるとのことでした。

後半のグループワークでは、4つのグループに分かれてビジネスコンペを行いました。リバネスから無限円の資金をいただき必ず黒字になる新しいビジネスを考える、というものです。塾生はそれぞれQuestionとPassionは持ち合わせていますが、ビジネスとして成立させて持続可能な仕組みを作る部分に苦労しているようでした。

 

 

第5回講義

  • 日時: 2014年9月13日(土) 13:30-17:00 (第2部17:30-19:30)
  • 場所: 大阪大学中之島センター 講義室
  • 講演者: 梅村聡 (元参議院議員、医師)

今回は、科学者維新塾の塾長であり、政治家の梅村先生にご講演していただきました。

梅村先生は医師でありながら、参議院議員として一期活躍され、現在も医療に関する問題のために尽力なさっている先生です。

講義の前半では、梅村先生の政治活動についてのお話と梅村先生が参議院議員時代に特にご尽力された脳死判定と臓器移植法についてのお話を中心にしていただきました。医療に関する問題について、あまり考える機会のない塾生は熱心に聞いていました。講義の後のディスカッションの時間では、梅村先生にお話していただいた内容について、そのまま鵜呑みにしていまうのではなく、みんな自分の意見を活発に発言していました。とくに、臓器移植に関する問題点については、それぞれの思いが現れており、非常に面白いディスカッションをすることができました。

グループワークでは、3つのグループに分かれて、脳死判定と臓器移植法について話し合いました。とくに具体的な話し合いのテーマを決めることはなかったのですが、どのグループも非常にまとまった意見を発表していました。

 

 

第4回講義

  • 日時: 2014年7月5日(土) 13:30-17:00 (第2部17:30-19:30)
  • 場所: 大阪大学中之島センター 講義室
  • 講演者: 瀬尾 拡史 (株式会社サイアメント代表取締役社長)
  • 講義題目: 「理系脳がサイエンスCGクリエーターになる」

第4回の講義はSCIEMENT代表の瀬尾拡史先生をお招きしました.

瀬尾先生は東京大学医学部医学科卒業後医師の資格を持ち臨床医として現場で働く傍ら,学生時代に3DCGの専門スクールであるデジタルハリウッドとダブルスクールし,サイエンスCGクリエーターとしても活躍されています.医学の専門家としての確かな知識と経験を活かし,他では真似出来ないような「正しさ」と「楽しさ」とを両立させたイラスト&アニメーションを制作されています.瀬尾先生は第5期の科学者維新塾に引き続き,今季も講師を快く引き受けてくださいました.

今回はこれまでの講義と違い,前半にグループワーク,後半に講義という形式で行いました.グループワークでは「インシュリン分泌」と「光学顕微鏡」という2つの題を2分間で絵コンテを用いて説明するというものでした.作成にあたっては映像の途中で場面が切り替わるときにいかに自然に見えるかということに注意をしながら作成をしました.グループワーク終了後に見た先生の「インシュリン分泌」の映像は一連の流れがスムーズに表現されており,背景知識のない人でも容易に理解ができました.今回学んだことは例えばスライドを使ったプレゼンテーションでも活きてくると感じました.

後半の講義では先生のこれまでの経緯や,現在,そしてこれからの活動についてお話をしていただきました.先生が強調しておられたのは業界に理系出身,理系脳を持つクリエーターが非常に少ないということです.理系の業界において,間違った表現がしばしばそのままにされていて,それが結果として社会的信頼を失うことにもなりかねないということを危惧しておられました.

先生は医学+CGという2つのバックグラウンドを活かし,その世界で気鋭のクリエーターとして活躍されています.私たちも例えば博士+αの何かを持つことで,自身の強いアイデンティティを確立できるのではないでしょうか.

 

 

第3回講義

  • 日時: 2014年6月7日(土) 13:30-17:00 (第2部17:30-19:30)
  • 場所: 大阪大学中之島センター 講義室
  • 講演者: 横山 広美 (東京大学大学院理学系研究科・理学部 准教授 / 広報室副室長)
  • 講義題目: 「科学と社会をつなぐ理系博士」

第3回講義は東京大学理学部広報室副室長としてご活躍の横山先生をお呼びしました.

前半は講義形式で先生のこれまでの歩みと仕事についてのお話をして頂きました.幼い頃から化学の読み物,書くことが好きで科学を伝えたい人になりたいというふうに考えていたようです.学生時代も雑誌「子ども科学」への投稿や,単行本などの執筆も行なっておられ,そのような経験もあって,東工大のポスドクを務めておられた頃から政府委員会へ科学者サイドの有識者として,参加し,科学と社会を結ぶ人としても活躍されてきました.

現在は東京大学理学部広報室副室長として,研究倫理,現代科学論や,科学コミュニケーションの分野に携わっておられ,大型科学の情報発信のあり方などの政府への提言も行っています.「科学者と信頼」「信頼とはなにか」という事を考えてもらいたいというふうに仰っていました.

後半は円形に椅子を配置し,座談会形式で行いました.事前に横山先生に5つの質問(お題)を出してもらい,それぞれの題について参加者が思うことを自由に述べ合うという形式を取りました.

題は以下のとおりです.

  1. 『社会や政府に科学者はどういう情報を発信すべきか』(広報、科学コミュニケーション)
  2. 『大学広報はどうあるべきか』(広報、科学コミュニケーション)
  3. 『緊急時の科学者情報発信はどうあるべきか』(広報、科学コミュニケーション)
  4. 『今、一番気になる科学政策の問題点は何か』(科学政策)
  5. 『信頼される研究者になるために必要なスキルは何か』(研究倫理)

どの題に対しても,興味深い意見がたくさん出て大いに盛り上がりました.時間の都合もあり,全てのトピックについて考えるということはできませんでしたが,どの意見に対しても,先生のこれまでの経験や事例を引き合いに出して,説得力のあるコメントをされていました.

 

 

第2回講義

  • 日時: 2014年5月10日(土) 13:30-17:00 (第2部17:30-19:30)
  • 場所: 大阪大学中之島センター 講義室
  • 講演者: 岡島 礼奈 (エルエスパートナー 取締役)
  • 講義題目: 「流れ星ビジネスを立ち上げるまで」

当日は株式会社ALE社長の岡島様に講師としてお越しいただき、「流れ星ビジネスを立ち上げるまで」というタイトルでお話しいただきました。岡島様が好きだという言葉「キャリアははしごではなくジャングルジム」が示す通り、まず、学生時代からの3回の起業経験、海外証券会社の勤務経験、NPOの立ち上げについて、つづいて現在につながる株式会社ALEを立ち上げるまでの多種多様な環境や立場で働いてこられた経験をわかりやすく比べながら説明していただけました。塾生も、はしごのような一本道のキャリアから一歩踏み出す勇気がわいたようでした。株式会社ALEでは2020年の東京オリンピックの開会式で人工流れ星を作ることを目標に、人工衛星の開発に取り掛かっています。

当日は貴重な人工流れ星の迫力ある実験室テスト映像も見せていただき、光る瞬間には塾生も声を上げて驚いておりました。

後半のグループワークでは岡島様の夢になぞらえて、「開催!!2020年東京オリンピックビジネスコンペ」という題目で、2020年の東京オリンピックで日本の科学技術をアピールできる新しいビジネスコンセプトを考えていただきました。塾生にとってビジネスをより具体的に考える貴重な機会となりました。懇親会ではビジネスコンペの順位が発表され大いに盛り上がりました。

 

 

 

第1回講義

  • 日時: 2014年4月5日(土) 13:30-17:00 (第2部17:30-19:30)
  • 場所: 大阪大学中之島センター 講義室
  • 講演者: 河田 聡 (科学者維新塾塾長、大阪大学教授)
  • 講義題目: 「私が科新塾を始めた理由」

科学者維新塾(科新塾)2014・中之島第6期の第1回講義は、23名の参加者にお集まりいただき、大盛況の内に無事終了致しました。お忙しい中ご参加いただいた皆様、本当にありがとうございました。 

塾頭の三本による今期テーマ『一歩、踏み出す』の説明の後、講義前半では、塾長の河田聡先生より『私が科新塾を始めた理由』と題して、かつて大阪・中之島にあって科新塾の適塾や、「博」の字の意味に関するお話、「イノベーションを実現したソニー(盛田昭夫や米Apple社(Steve Jobs)と「被雇用者(サラリーマン)が支配するオーナー不在で誰も決断しない現在の危機的な組織」との比較・考察、そしてこの日本の窮地を救う独立自尊の志士としての博士の役割、その夢の持ち方といった話題に加えて、昨今の女性の活躍に注目した「Wの未来」など、科新塾の設立理念を踏まえて熱くお話しいただきました。また、ご講演の途中では、参加塾生にもお話しをふっていただき、終始インタラクティブな講義であったと思います。 

後半は、『2020年の社会をどうしたいか?』と題して、参加者全員でグループワークを行いました。さらに今回は、科新塾定番(?)のこの課題を参加者一人一人の問題としてより具体的に考えてもらうため、時間差で『(先のお題を踏まえた上で)1年後に目指す到達目標は?』という課題にも挑戦してもらいました。ディスカッションの時間がもっと欲しかったというご意見もいただきましたが、「博士の会を発足させる」や「あえて学歴社会にする」といったユニークな提案まで、4グループそれぞれに興味深い意見を見ることができました。

 講義後の懇親会にも、ほとんどのメンバーがそのまま参加してくれ、懇親会の2次会まで大いに盛り上がりました。次回以降も、魅力的な講義を提供するだけでなく、塾生一人一人が一歩踏み出して行動を起こせるよう、活発な活動を展開していきます!!最後に、河田先生のお話にも登場した福沢諭吉の言葉で本文を結びたいと思います。

「昔年の異端妄説は今世の通論なり、昨日の奇説は今日の常談なり。然ば即ち今日の異端妄説もまた必ず後年の通説常談なるべし。学者宜しく世論の喧しきを憚らず、異端妄説の譏を恐るることなく、勇を振て我思う所の説を吐くべし。」(福澤諭吉『文明論之概略』より)

第5期講義議事録


第7回講義

  • 日時: 2013年11月19日(土) 13:30-17:00 (第2部17:00-19:00)
  • 場所: 大阪大学中之島センター 講義室
  • 講演者:瀬尾 拡史(医師、サイエンスCGクリエーター、株式会社サイアメント代表取締役社長)
  • 講義題目: 「本当に必要な科学コミュニケーションとは?」

第7回講義では株式会社サイアメント代表取締役社長・医師の瀬尾拡史様を講師としてお招きし、科学とデザインについてお話いただきました。

前半の講義では「本当に必要な科学コミュニケーションとは?」という題目でお話をいただきました。まず、なぜ医学とCGを学び、それらを組み合わせて起業したのかを瀬尾様の経歴にそって丁寧に説明していただけました。そこから、中2のときNHKの科学番組「人体Ⅲ」を見て、科学を映像で伝える面白さに衝撃を受けたことが原点であることをお聞きしました。その後、科学を正しく伝えるための知識と本物の経験を得るために東京大学医学部で医学を学ばれたこと、また科学を表現する手段としてデジタルハリウッドでCGを学ばれたことをお聞きしました。そして、裁判員制度のCG映像として採用されたことが人生の転機であったことをお聞きしました。瀬尾さんの目的と経歴は「人体Ⅲ」以降今日までまったくぶれていないことが分かりました。

講義中盤では日本における科学コミュニケーションからデザインが欠落しているといった辛辣な指摘もいただきました。アメリカでは科学を映像化する専門の職やそのスクールが存在している一方で、日本は文章を書くこと中心に投資や時間が費やされている事実があることをお聞きしました。瀬尾様や塾生の一部が映像からサイエンスに入ったことを考えると、もう少し科学を映像で伝えることにも注力すべきとのことです。瀬尾様の講義のタイトルの答えはここら辺にあるのではないかと感じさせられました。

講義の最後には、ドラマ彼岸島のオープニングCGをはじめとする最先端の3DCG映像とともに、CG作りの生の現場についても教えていただきました。特に、「CGも2流、医者も2流でいい。つなげられる人がいれば新しいことができる。」という言葉は大変印象的でした。

後半のグループワークでは『各分野のつながり』インフォグラフィックス作りを行いました。まず塾生各々の専門分野に関するデータを持ち寄り、つづいて各グループごとにバラバラなデータを一握りに捕らえる軸や切り口を模索し、最後にデータのつながりをインフォグラフィックスにしていただきました。この作業を通してデザインの本質である情報の抽出とその表現を学びました。各グループの発表では斬新な切り口が飛び出し、瀬尾様からは面白いとの評価とさらに分かりやすくするための改善案をいただきました。

瀬尾様は懇親会にも御参加いただき、時には講師として、時には同年代としてざっくばらんにお話いただきました。塾生はまったく同年代でありながら、博士を生かしたキャリアを自ら開拓した瀬尾様から大いに刺激を受けました。塾生にもできるはずです!

 

 

第6回講義

  • 日時: 2013年10月12日(土) 13:30-17:00 (第2部17:00-19:00)
  • 場所: 大阪大学中之島センター 講義室406
  • 講演者: 井上智子 (キャリアコンサルタント)
  • 講義題目: 「キャリアという旅を思う存分に旅する」

第六回目の講義は、これまで外資系企業で製品開発に携わり今後はキャリアカウンセラーとしての道を歩まれる井上智子様を講師としてお招きしました。前半は井上様による講義、後半は井上様の元同僚の五十嵐ゆき子様がファシリテーターとなって塾生のキャリアに関するグループワークを行いました。

前半では井上様が、これまでご経験された職務内容や退職に至った経緯を、その時ご自身が感じた気づきや学びと併せてお話しされました。井上様は京都大学でタンパク質の構造化学を学ばれた後、東洋紡績で研究員として就職致しました。そこで直属の部下をお持ちになり、人を育てることを初めてご経験されたとのことです。しかし、旧態依然として人事制度に疑問を持ち、P&Gファーイースト・インクへご転職されました。そして、そのような能力評価主義の世界で消費者調査や開発のプロジェクトマネジメントを手掛けていきます。その後、更なるキャリアアップを考え、日本イーライリリーにご転職され、アメリカ本社への赴任やプロジェクトマネジメントの統括部長をご経験されました。しかし、以上のように着実にキャリアを構築しながらも、この頃から「将来的には働き方を変えたい」という想いと定年が無く年齢に応じた働き方を考えるようになり、退職に至ったとのことです。そして、3社を通して改めてご自身の本当にやりたいことを考え、これまでの経験やスキルを活かしてキャリアカウンセリングによって人・社会の役に立とうとご決意されました。そして、具体的な考え方として、「問題をProblemとして考えるのではなくIssueとして捉えよう」、「むしろ誰も解決できないような困難な問題に挑戦し、全力を尽くして解決しよう」などをご提示されました。キャリアの岐路に立った時は、「例えその道に危険や不安を感じても、自分がワクワク・ドキドキする方向を目指そう」との考え方は、これからの進路に不安を持つ塾生の背中の後押しになりました。

後半では、元P&G人事部、イーライリリー人事部に在籍されていた五十嵐様によるグループワークを行いました。塾生のキャリアに関する不安・迷い・課題を語り合うために、まず二人一組で話し合い、その後話し合った内容を全体で共有し、意見を交換しようとしました。「研究者としての能力が自分にあるか?」、「転職を相談する場があるのか?」、「自己主張の強い人たちが集まる国際的な職場でやっていけるか?」などの意見が挙がり、これらの悩みから一つの根本的な悩みを抽出しようと試みましたが、塾長である河田先生より「この悩み相談をして何の意味があるのか?」というご指摘がなされました。そして塾生が提示した悩みが人生を変えるほどクリティカルなのかどうかが焦点となり、議論の落としどころが着かないまま後半を終了しました。

今回の講義では塾生のキャリアに焦点が当たったことでキャリア相談会のようになりましたが、科学者維新塾はあくまで講師と塾生がそれぞれの意見・主張・考え方を交えて議論を行う場であることを再認識致しました。年間の講義の約半分を終え、講師・塾生同士の議論にも「慣れ」と「空気を読む」雰囲気が漂い出した気がしますので、今後は議論の中でお互いが切磋琢磨できるような環境を作り上げていきたいと思います。塾生の皆さんもご協力お願いします。

 

 

第5回講義

  • 日時: 2013年9月14日(土) 13:30-17:00 (第2部17:00-19:00)
  • 場所: 大阪大学中之島センター 講義室406
  • 講演者: 蓑田 裕美 (WEcafe 代表)
  • 講義題目: 「サイエンスコミュニケーションで社会を変える」

第5回講義は、サイエンスコミュニケーターでウィークエンド・カフェ・デ・サイエンス(WEcafe)代表の蓑田裕美様を講師としてお招きしました。今回は、前半は随時質問を投げかけながらの講義形式、後半は事前に募集した課題への質疑応答を中心とした対談形式で講義を行いました。

  前半では、まず、蓑田様がサイエンスコミュニケータになられたきっかけと現在に至る経緯を、勤務先の化粧品会社研究所でのお仕事の様子も交えながら自己紹介という形でお話しいただきました。その後、蓑田様が大学院生の時に立ち上げたサイエンスカフェ団体とそこで開催してきた様々なイベントについてご紹介いただきました。蓑田様は、サイエンスカフェ以外にも、科学系シンポジウムや工場見学会の企画、中高生への出前授業など非常に精力的に活動されており、特にその第一歩として「自ら手を挙げて」動き始めることと同じ方向を向いた「仲間をつくる」ことの大切さを強調しておられました。また、それらの活動を続ける中で、情報を鵜呑みにせず批判的に見つめる「知的ツッコミ」といった活動のセールスポイントを発見し、これを伝え広めることで「社会を変える」というご自身の目標についても詳しくお話しいただきました。前半講義の最後に設けていただいた質問タイムには、サイエンスカフェに興味のある塾生を中心に、サイエンスカフェの企画・運営に関する内容からビジネスへの展開の可能性、さらにはそこへの博士学生の関わり方まで、参加者のほぼ全員から活発な質疑がありました。

 後半は、事前課題(ふだん科学への関心が低い方々へ、科学に対する興味を持ってもらうための効果的なアプローチ方法)への回答を蓑田様にご添削いただき、そのコメントと回答塾生による内容の解説を中心にディスカッションを行いました。回答の中には、博物館の夜間開放や知的ツッコミにも通じる科学的思考に重点を置いた企画、さらには“街コン”のサイエンス版やギャンブルの要素を取り入れたユニークな企画もあり、それぞれについて集客力や運営コスト、収益を上げる仕組み、最終的にビジネスモデルとして成立し得るかなどを参加者全員で議論し大いに盛り上がりました。

 懇親会では、事前課題に対する回答の中から、蓑田様に「実際にやってみたい企画 第1位」と「是非開催を検討したい企画 特別賞」を選んでいただき、最後まで大盛況のうちに終了しました。また、今回の講義には、東京の科新塾・御茶ノ水から二人の参加者があり、第4回講義の宮内様とサマースクールを経て、御茶ノ水との交流が活性化しつつあるのを感じました.今後も是非この流れを加速させていきましょう!

 

 

第4回講義

  • 日時: 2013年7月6日(土) 13:30-17:00 (第2部17:15-19:15)
  • 場所: 大阪大学中之島センター 講義室301
  • 講演者: 小松 研吾 (株式会社ニュートンプレス編集部)
  • 講義題目: 「博士が編集者になって科学を伝える」

第4回講義は株式会社ニュートンプレスの小松様を講師としてお招きしました。本講義は、前半では小松様の講義、後半では塾生による編集体験を行いました。また今回は同じくニュートンプレスにお勤めされおり、科新塾・御茶ノ水の運営である宮内様にも講義をしていただきました。

前半では、小松様のこれまでの経緯、Newton編集者による記事の作成方法、iPad版Newtonのあり方の3点についてお話ししていただきました。 Newton編集者は常に科学記事のネタになるかどうかを考えながら生活しているという点は、研究をしている私たちにも通じるものがあるのではないかと思いました。また休憩時間に、実際にiPad版Newtonを見せていただき、直感的に科学現象を把握できる点に塾生一同非常に興味を惹きつ けられました。

後半では、事前に塾生に書いてもらった記事を数人のグループに分かれてより良い記事にするポイントの話し合い、発表をしてもらいました。そして最後には、小松様、宮内様から直々に記事の修正ポイントを教えて頂きました。その際、塾生の指摘したポイントは的を得ているとのお褒めの言葉を頂けました。また、良い記事を書くポイントを知っていることと実際に書くのでは大きく違いがあり、良い記事(文章)を書くため には他人に読んでもらう必要があるとのアドバイスも頂きました。

本講義では講師の方への質問がこれまでの講義よりも多く、とても良かったと思います。次回講義ではさらに活発な講義にしていけるよう準備していきたいです。また今回は、御茶ノ水の宮内様にも講義をしていただくことで御茶ノ水と の交流も行うことができました。7月末にはサマースクールがありますので、より御茶ノ水と交流できることを楽しみにしています。

 

 

第3回講義

  • 日時: 2013年6月15日(土) 13:30-16:25 (第2部16:40-18:40)
  • 場所: 大阪大学中之島センター 講義室702
  • 講演者: 飯塚 哲哉 (ザインエレクトロニクス株式会社代表取締役会長)
  • 講義題目:「理系博士がハイテクベンチャーの創業者になる」

第3回講義は、ザインエレクトロニクス株式会社代表取締役会長の飯塚様を講師としてお招きしました。今回は、前半は随時質問を投げかける講義形式、後半は事前に募集した質問を中心とした対談形式で講義を行いました。

 前半では、まずは、飯塚様がザインエレクトロニクス株式会社を設立するに至った経緯を含め、自己紹介という形でこれまでの経歴をご紹介頂きました。その後、半導体業界の変遷を中心に、日本経済・社会の変化を絡めながらベンチャーの価値・必要性をお話し頂きました。その後、ザインエレクトロニクス株式会社のご紹介を頂いた後、燃えろ若者という主題で熱いメッセージを頂きました。飯塚様は、シリコンバレーで働いていた時に同僚がベンチャーで成功して財を成していく過程を目の当たりにして衝撃を受け、その後の大きな原動力になったそうです。私自身、そのような強烈な自分との”差”を実感したことはなく、そのためにももっと視野を広げていかなければならないと感じました。

 後半で最初に取り上げた質問は、科新塾のテーマでもある「キャリア選択の豊かさ」でした。飯塚様の、キャリアの選択肢が少ない国は豊かではないというお話しから発展し、国を豊かにするためには、既得権に捕らわれずに若者が自ら動かなければならないという議論になりました。また、ベンチャーを起業すること自体は大変では無く、人集めが大変であることや、飯塚様の今後の目標が何かなど様々な議題に対して盛り上がりました。

 懇親会も含め非常にフランクに話して下さり、ザインエレクトロニクス株式会社を一代で築いた飯塚様と非常に近い距離で議論が出来た会でした。他者と自分との大きな富の差を感じることが原動力となる、キャリア選択の多様性が国を豊かにするなど、これまで考えていなかった事柄を学ぶ事が出来ました。ベンチャー創業をあくまでも手段として捕らえ、その後何を成し遂げるか、今後の課題としながら様々な経験をしていきたいと思います。

 

 

第2回講義

  • 日時: 2013年5月18日(土) 13:30-17:00 (第2部17:30-19:30)
  • 場所: 大阪大学中之島センター 講義室702
  • 講演者: 梅村 聡 (科学者維新塾塾長、参議院議員、医師)
  • 講義題目:「研究者の自律性」

 第2回目は、民主党参議院議員であり科新塾中之島塾長でもある梅村聡先生が御講演されました。テレビ大阪様による取材が急遽決定したため緊張感が漂う中での講義となりましたが、「政治・医療」をテーマとして塾生と講師の間で様々な意見が飛び交い、大盛況のうちに終了しました。

 前半は「研究者の自律性」と題して、梅村先生はまず医者から政治家へと転身した理由をお話されました。例えば、当時、医療行為が成功したかどうかで刑事罰に問われるかが決まってしまうため、医者は大きな損失を被らないような行動に出てしまいました。しかし、そのような「内部の論理」によって患者ではなく医者が優先となってしまうことに梅村先生は疑問を抱き、政治家となることを決意します。政治家となってからは、「尊厳死」や「生活保護」といったタブー視されてきた事柄にもメスを入れていきました。また、私たち塾生に対しても、そのような内部の論理に支配されず、自分達の行動は自分達で律することのできる「自律した科学者」になることが真のプロフェッショナルであると、熱いメッセージを送られました。 

 後半は3つのグループに分かれて、「尊厳死は国が規制するべきか?医者と患者が自主規制するべきか?」を塾生同士で議論しました。尊厳死の是非については、亡くなろうとしている人やその家族の選択を尊重したいということで、「尊厳死自体は認めたい」との意見が多く出ました。しかし、「規制」に関しては、2グループは国が規制するべき、1グループは規制すべきではない、となりました。前者では、国はリビングウィルや医者の刑事免責に関する法的な保証をする必要があること、後者では、国は全てのケースに対応できるような法案を作ることは無理であり、医者や患者へのガイドライン作りのみするべきだ、との意見が出ました。 以上のように少ない時間にも関わらず、この分野で話題となっている事案を塾生たちが指摘したことに、梅村先生も非常に感心していました。 

 今回の講義では、政治家・医者・科学者は一見異なる職業ながら「内部の論理」問題に関しては通低していることがある、ということを認識しました。今後は、研究だけではなく、政治と医療に関する勉強と議論も積極的に行っていき、どの分野においても自律して判断できる人間になれるように切磋琢磨していきたいと思います。それでは、次回の講義も新たなことにチャレンジしていきましょう!

 

 

第1回講義

  • 日時: 2013年4月13日(土) 13:30-17:00 (第2部17:30-19:30)
  • 場所: 大阪大学中之島センター 講義室703
  • 講演者: 河田 聡 (科学者維新塾塾長、大阪大学教授)
  • 講義題目: 「私が科新塾を始めた理由」

 

前半は塾長である河田聡先生による講義、後半はグループワークを行いました。 

講義は、「私が科新塾を始めた理由」というタイトルでした。 先生の講義の中で以下の3つのことが特に印象的でした。

  1. 博士は博識、博愛、博覧の士であるとともに独立自尊の精神を持つ必要がある。
  2. 世の中で生き残っていくためには、変化に対応できなければならない。そして、変化に対応するためには既得権益にこだわっててはいけない。
  3. アップルの「Think different!」のように、当たり前をなくして、常に異なる視点で物事を考えることが重要である。

グループワークでは3つのグループに分かれて、「2030年の社会はどのようになっているか」と「自分たちは、その社会に対してどのようにアプローチするか」の2点について議論し、その内容を発表してもらいました。

2030年の社会の予想としましては、「医療・情報技術・製造技術の発展」、「企業数の増加(ニーズの多様化)」、「労働者の構成の変化」などを想定し、それに対するアプローチとして、「常に最先端の技術に関するスキルを身につける」「特定のニーズに特化した企業の設立」、「出産後や高齢者になっても働く」などが挙げられました。 

今回の講義を受けて、河田先生のおっしゃっていたことを常に意識し、様々な活動に取り組んでいきたいと思います。特に科新塾では、異なる分野の方々と議論することができるので、色々な視点で物事を考えていけるように頑張っていきたいです。

第4期講義議事録


第10回講義(最終回)
  • 日時: 2012年11月24日(土) 13:30-17:00 (懇親会あり)
  • 場所: 大阪大学中之島センター7階702号室
  • 講演者: 塾生
  • 題目: あなたの人生の物語
  • 司会: 岡野真之、大橋慶郎、大谷智仁、水野有智

第10回講義(最終回)は終了しました!合計25人ほどの方々に参加頂きました。

最終回は第4期科新塾中之島修了式として、卒業式スタイルで執り行いました。河田聡塾長より塾生一人一人に修了証書が手渡され、塾生は今期の感想と今後の夢を語りました。まだ今後の夢を模索している人も多かったですが、みな晴れ晴れとした表情で熱く語っていました。賛助の斎藤治様、CPP村磯鼎様、第1期科新塾御茶ノ水修了生の鶴沢英世様、ナノフォトン中原林人様より、祝辞もいただきました。みなさん、塾生らの1年間の成長ぶりに驚かれていました。1年を通してご支援頂き誠にありがとうございました。

懇親会ではこの1年間運営をしてきた塾頭の岡野真之、塾頭補佐の大谷智仁、水野有智、大橋慶郎らに塾長から修了証書が手渡され、彼らも今後の夢について語りました。運営を1年通してやり切ったことは、とても大きなかけがえのない経験となりました。1年間、参加頂いた塾生のみなさま、どうもありがとうございました、そしてお疲れさまでした!

来年より第5期始動予定です、詳細が決まりましたらまたこちらに掲載させて頂きます。1年間ご支援頂きました賛助の皆様、見守ってくださった多くの方々に運営一同、塾生一同、感謝しております。

 

 

第9回講義

  • 日時: 2012年10月27日(土) 13:30-17:00 (第2部あり)
  • 場所: 大阪大学中之島センター6階607号室
  • 講演者: 榎木英介(医師)
  • 題目: 博士のリアル
  • 司会: 大谷智仁、大橋慶郎、水野有智
  • 司会補佐:小野田穣、雪永敏志 

 

第9回講義は終了しました!合計25人ほどの方々に参加頂きました。司会・司会補佐のみなさん、塾生の皆さん、お疲れさまでした!

 第九回講義では、「博士のリアル」というタイトルで、医師であり、博士雇用問題について日本で有数の有識者であられる榎木英介先生にご講演頂きました。現在の理系博士を取り巻く現状について、客観的なデータをもとに非常にわかりやすく解説していただき、このような状況の中で、博士が自分自身の人生で最もやりたいと思えること(ミッション)を持ち、博士の能力を活かして多彩な分野で活躍することの重要性について熱くご説明いただきました。その際の概念として、博士+Xを導入され、博士が様々な職業(X)に就いたときに、博士の能力は大いに活かすことができると説かれました。

後半の企画では、前半の講義の内容を汲みつつ、科学者維新塾の今期における総集編企画としまして、「博士+X」と題した議論を行いました。これまで当塾では Xとして政治家や起業家など様々な職業を検討してきましたが、今回は前半の講義を受け、塾生自身が自分のミッションを考えるところからスタートしました。 各々のミッションに基づき、ミッションを共有できる塾生同士でグループ分けを行い、既存の概念に囚われない、各グループごとの最高のXを議論してもらいました。選んだXに博士の能力が付加されることに対するメリットや社会的な意義、はては具体的にXを目指すための方法論まで議論の対象に含めました。 

 一時間程度の短い議論の中で、最後に、簡潔に議論の内容を発表してもらいました。各グループともそれぞれの個性を活かした着想に基づき、独創的な発表を行 い、また、それぞれについて榎木先生から講評をいただきました。Xとしてライフ・人材コンサルタントや、果ては音楽業界など芸術方面に博士の能力を活かす方策を検討するグループが現れるなど、既存の価値観にとらわれない自由な議論ができたのではと思います。

 自分自身のミッションに基づき、これまでにない新しい博士+Xの姿を検討することで、今まで当塾で検討してこなかった、多くの博士+Xの姿を塾生自身が見つけたことは、本塾にとっても、塾生個人にとっても大きな財産であると考えます。 

 今後各自が博士としての将来を考える上で、自分自身の可能性を狭めることなく、多くの分野に飛び込むことができるような足がかりになれば、と思います。

 

 

第8回講義

  • 日時: 2012年9月29日(土) 13:30-17:00 (第2部あり)
  • 場所: 大阪大学中之島センター 7階702号室
  • 講演者: 松尾佑一(作家)
  • 講義題目: 理系小説の面白さ
  • 司会: 三野聡大
  • 司会補佐: 卜渊、知念いち乃

 

第8回講義は終了しました!合計30人ほどの方々に参加頂きました。司会・司会補佐のみなさん、塾生の皆さん、お疲れさまでした!

講義の前半では「理系小説の面白さ」というタイトルで、作家の松尾先生よりご講演頂きました。理系博士でありながらどうして作家の道を進むことになったのか、だからこそ書ける理系小説とはどんなものか、松尾先生ならではのお考えを聞かせて頂きました。理系博士が持つ斬新で人とは異なる発想・視点は研究の道だけでなく他の分野でも活かせるはずだ、そのような思いは塾生達も持っていたとは思いますが、実際にその言葉を実践しておられる松尾先生のメッセージには説得力があり、塾生達も大きな刺激を受けました。

 講義の後半では「第一回科学者維新塾文学賞」と題した小説執筆の企画を実施しました。 出版社を模したグループ(作家と編集者がいる)に分かれて掌編小説を書いてもらい、作品を朗読、最後に投票により大賞を決めました。1時間という短い時間にも関わらず、数多くのクオリティーの高い作品が生まれました。 発表し評価されるようにしたため、人に見られるという意識が生まれたのが良かったのかなと思います。

 個人的に特に印象的だったのは、研究職と作家を両立していてさぞかしお忙しい先生なんだろうなと思いきや、非常に余裕があって楽しそうな松尾先生のその雰囲気(実際には大変なのだとは思いますが)、そして意外にも小説を書き始める前にはあまり小説を読んでおられなかった点でした。自分は固定観念にとらわれている、自分の可能性を自分で勝手に消してしまっているのではないか、そう感じました。

(司会 三野聡大)

 第8回講義の司会補佐をすることになり、講義の事前準備をお手伝いしました。松尾先生を囲んでの事前の打ち合わせで後半の“小説を書く”という企画について「あーでもない、こうでもない」といろいろ意見を出し合って形にしたのですが(運営の皆さんは毎月こういう風に講義の準備をして下さっているのかと思うと本当に感謝です)、「この企画はちょっとハードだな。」と思っていました。自分は小説を書くのは避けようと当日の企画が始まる直前まで逃げの態勢でした。が、「逃げちゃダメだ」と自分に言い聞 かせてやってみると以外と楽しかったし、なかなか力作が多くて、私も皆も自分の新たな一面を発見できた企画になったのではないでしょうか。司会の三野君が見事に仕切ってくれて、講義では司会補佐のお仕事はしていませんでしたが、ここのところ忘れがちだった「積極的に何事にもトライする」という気持ちを思い出だす事の出来た講義でした。

(司会補佐 知念いち乃)

 

第7回講義

  • 日時: 2012年7月21日(土) 13:30-17:00 (第2部17:30-)
  • 場所: 大阪大学中之島センター 6階607号室
  • 講演者: 塾生のみによる議論の回
  • 司会: 運営一同(岡野真之、大谷智仁、大橋慶郎、水野有智)
  • 司会補佐: 酒井綾子、南川丈夫ら塾生6名

第7回講義は終了しました!合計30人ほどの方々に参加頂きました。司会補佐のみなさん、塾生の皆さん、お疲れさまでした!

 第7回講義は、塾生同士の議論の回として行ないました。塾生らには事前に、自分が目指す今後の道・キャリアパスについて1枚の紙にまとめておくように宿題を出していました。当日は、その宿題は使用せずに、違う視点から考え視野を広げてもらうために、自分の希望するキャリアとは違う分野についてグループディスカッションしてもらいました。グループはこれまでの6回の講義や勉強会を下地として、「科学・技術」「教育・サイエンスコミュニケーション」「政治・行政」「ビジネス(経営)」「ビジネス(投資)」「メディア・情報」とし、塾生らは事前アンケートで興味があると答えた分野とは違う分野でディスカッションに臨みました。ディスカッションは、まず各分野において理想の社会とはどういうものなのかを考えてもらい、それを実現するためには現状から何をどう変えればいいのか、そのためには自分たちが何をすればいいのか、という一連の流れを具体的に考えてもらいました。各グループには1名ずつ司会補佐の方がつき、議論を円滑に進めていました。途中ではグループ間でメンバーを移動させた問答の時間を設け、最後に各グループには模造紙等を使って簡潔に発表をしてもらいました。そして講義の終わりに、塾生らには自分たちが提出した宿題を見返してもらい、各自の今後の道を見つめ直してもらいました。

 結果として各グループともにとてもユニークで具体的な発表を行ない、現状の社会の問題点を指摘するだけでなく、改善案をきちんと明示していました。ただ時間の制約もあり、それが個々人の具体的な行動プランやキャリアに繋げるまでには至りませんでしたが、一度視点を変えて議論したことで、宿題を見返した時によい刺激となっていた方が少なからずいたようです。

 次回講義まで時間が空きますが、その間に塾生のみなさんにはこれまでの講義で得たことを一度おさらいし、広い視野に立って自分の道を見定め、今後は具体的な行動に繋げていって欲しいと思います。

(塾頭 岡野真之)

以下、司会補佐(企画委員)のみなさんの感想です。

 今年初めて科新塾に参加させて頂き、流れるままに企画委員になってしまい、初めは戸惑うことばかりでした。第7回は塾生同志の議論の会と決まっていたものの、何を議論するかについてはなかな決まらず、また、議論の方向性が決まった後も不安要素はつきず、企画する側の難しさを実感しました。何とか第7回講義が無事に終われたのは、運営側の皆様のご協力、企画委員みんなの個々の頑張り、そして参加して下さった塾生みなさまあってのことだと感謝しております。

 個人的には、私の班は、メンバー全員がとても積極的に意見を言って下さったのですが、私のまとめる力が不足していた為、議論が散漫になったところが一番の反省点です。他にも反省点は多々ありますので、今後の糧にしていきたいと思います。仕事と家の用事他で時間のやりくりが大変でしたが、企画委員をやってみて本当によかったです。非常に良い経験をさせて頂き、ありがとうございました。

 最後になりましたが、今回の第7回講義が塾生みなさまの視野を広げる一助となれば幸いです。

(司会補佐 酒井綾子)

 企画委員として、講義の企画とファシリテーションを初めてやることになりました。講義の企画を立てる際にすでに議論が百出して、本当にこれで講義の方針が決まるのだろうかと、正直不安でしたが、最終的にはそれなりに固まったことは驚きです。ファシリテーションにおいては、自分のグループの議論をまとめるというよりも、時間管理などに回ってしまっていました。メンバーの議論にどのように関わるべきかということに迷ったということが大きな敗因でした。

 全体を見渡すと、やはり議論をまとめる能力というものがいかに重要かということを考えさせられる結果となりました。議論が何とかまとまったのは、メンバーの皆様が自発的に提案およびまとめを行ったからだと感じます。今回のテーマは、世の中を変えるための自分のキャリアデザインについてでしたが、議論の結果よりもむしろ企画委員をやった経験が今後に影響するだろうと感じます。

(司会補佐 藤川飛鳥)

 今回,初めて企画委員として参加させて頂きましたが,企画側の難しさを改めて感じました.企画を行うにあたり特に重要だと感じたのは,「事前準備!」これに尽きるでしょう.少々準備不足で至らない所だらけでしたが,皆様と楽しい議論をすることができました.これもひとえに,班のメンバーや企画委員の皆様の強力なサポートがあってのことです.掛け替えのない体験をさせて頂き,嬉しいです.今思えば,「あのときこうしていれば…」と思える部分が沢山ありますので,今後の糧にしていく所存です.

(司会補佐 鹿田憲吾)

 企画委員として、第7回に参加することができ、とても楽しく、有意義な経験をすることができました。通常の塾生という立場とは逆に、企画側から見ると、(僕を含め)塾生と何を議論したら楽しいだろう?有意義なんだろう?と、科学者維新塾をまた違った視点で見ることができました。特に今回のテーマは、別の視点に立ってキャリアを考えようというものでした。キャリア含め、いろんなことを別の視点で見ることで、新たに見えてくることがとてもたくさんあるのだなと強く感じました。

 反省点は、議論をする際にみんなの意見をもっとうまく引き出したり、出た意見を模造紙にもっとうまく視覚的に書けていたら、もっと有意義な意見交換できたのかな?と思いました。ファシリテーションや意見のビジュアル化も大事と思えたことも、大きな経験でした。今後もこの経験を活かして、自分のキャリア等を考えて行きたいと思います。

(司会補佐 南川丈夫)

 

 

第6回講義

  • 日時: 2012年6月16日(土) 13:30-17:00 (第2部あり)
  • 場所: 大阪大学中之島センター 5階507号室
  • 講演者: 菅沼舞(毎日新聞)
  • 講義題目: 記者的思考のすゝめ
  • 司会: 熊谷孝幸
  • 司会補佐: 上羽陽介、雪永敏志

 第6回講義は終了しました.合計35人ほどの方々に参加をしていただきました.参加者の皆さん,ありがとうございました!

 第6回講義では、毎日新聞記者の菅沼舞さんに「記者的思考のすゝめ」というタイトルで、新聞記者がどういう仕事なのか、理系が記者になるとはどういうことかをご講演頂きました。本質を見抜くために求められる能力は博士でも記者でも同じであると説かれ、また、記者を最後の仕事ではなく、キャリアパスとしても考えて欲しいとのお言葉には目が覚める思いがしました。

 今回の講義では塾生に「記者としての当事者意識を持って参加してもらう」という狙いのもと、講義の最初では他己紹介としてその場で他の塾生を取材し紹介しました。他己紹介で塾生のアイスブレイクが出来たため、講義の中では自発的に活発な議論が行われました。後半では、「新しい情報発信」というテーマでグループディスカッションを行い、今後の新聞・メディアの形についてアイディアを提案しました。決められた時間の中で白熱した議論が行われ、菅沼さんからお褒めの言葉を頂くほどの提案をしたグループもありました。

 普段の生活で情報に触れない日はありませんが、その情報を発信している人と議論をする機会はなかなか無いと思います。今回はその貴重な体験ができ、今後の情報へ接する態度が変わることと思います。

(司会 熊谷孝幸)

 司会補佐として講義の進行・グループディスカッションの内容の設定から携わることで,本講義に対するモチベーションが非常に高くなりました.また,事前準備の有無によって講義から学べる量が大きく異なることがわかりましたので,これからは事前準備をしっかり行って参加していきたいと思います.

(司会補佐 雪永敏志)

 

 

第5回講義

  • 日時: 2012年5月19日(土) 13:30-17:00 (第2部あり)
  • 場所: 大阪大学中之島センター 3階703号室
  • 講演者: 瀧本哲史(京都大学産官学連携本部客員准教授、エンジェル投資家)
  • 講義題目: 「生き残る科学者、消える科学者」
  • 司会: 水野有智
  • 司会補佐: 吉良新太郎、長井隆浩

 

 第5回講義は終了しました.合計30人ほどの方々に参加をしていただきました.参加者の皆さん,ありがとうございました.

 今回の講義では,講義を前半と後半に分けて,前半は講師で,エンジェル投資家の瀧本先生から.「生き残る科学者・消える科学者」というタイトルで講義を頂きました.講義の中では,瀧本先生のご来歴から出発して,今後科学者の世界においても進む人材の「コモディティ化」とその中でもサバイブしていけるあり方について話していただきました.

 講義の後半では,講義の中で生じた疑問,主に教育や教育者についての議論を行いました.また,「生き残る科学者像」について,その具体像をディスカッションを通じて検討しました.議論は発散して,上手く結論を出すことができませんでしたが,講義までに考えたこと,議論において考えたことを各自持ち帰って反芻することで,塾生が自分達の今後を考える際の材料にできるものと考えます.

(塾頭補佐 水野有智)

 瀧本先生の講義を経て、社会を俯瞰的に見てどこに投資すべきかを判断し、実際に投資していくことが、現状に甘えることなく新領域を見つけていく手段であると感じ、これからの世の中において、投資するための能力の必要性を感じました。その上で、先生の「投資において、当たり前のことを当たり前にやっているだけなんですよ」というセリフが印象的でした。

 司会補佐を行ったことで、参加者のニーズと講義のテーマを合わせた議論のテーマの設定がいかに難しいかを痛感する一方、そのようなテーマを追求することこそがより講義の波及効果を一層高めるものだと得心しました。

(司会補佐 長井隆浩)

 今回講義で司会補佐として、初めて運営側に立って活動させて頂きました。普段と異なり能動的な立場で講義に参加することで、講義を「作る」のがいかに大変か学ぶことができました。この経験により、第六回以降の講義がより貴重なものと感じるようになりました。さて、講義自体は事前の準備にも関わらず、想定した通りにまとめることができませんでした。講義中に瀧本先生から助言を頂いたりもしましたが、予期していない事態に何もすることができませんでした。これは準備が不足していたのと、対応する能力が無かったためと痛感しました。反省点ばかりが目立つこととなってしまいましたが、今後に生きる得難い経験をさせて頂いたと感じております。

(司会補佐 吉良新太郎)

 

 

第4回講義

  • 日時: 2012年4月21日(土) 13:30-17:00 (第2部あり)
  • 場所: 大阪大学中之島センター 2階会議室1
  • 講演者: 中原林人(ナノフォトン株式会社 代表取締役社長)
  • 講義題目: 科学者と経営者の間
  • 司会: 大谷智仁
  • 司会補佐: 吉田恵美、渡辺梢

 

第4回講義は無事、終了いたしました!総勢30人近くの方にご参加頂きました、みなさまお疲れさまでした。

 今回の講義では、始めに、「経営者を直接取材して得た経営の方法とモチベーション」について、塾生5人によるそれぞれ2分間のスピーチを行いました。その後ナノフォトン代表取締役である中原林人先生により講評を頂き、「科学者と経営者の間」と題して、「決断」をキーワードに、これまでの経歴や経営方針、経営についてご講演いただきました。講義中には塾生からも活発に質問が飛び交い、大変に盛り上がりました。

 講義の後半では、中原先生に加えて塾長の河田聡先生のお二人を中心において、塾生も含めて全体での議論を行いました。この試みは、塾生に対してこれからの人生で自分の将来の目標として科学者を目指すか、経営者を目指すかの「決断」を迫ろうというものでした。初の試みでしたが、科学者と経営者のそれぞれについて、その定義から考察を行い、二時間弱の議論は多いに盛り上がりました。

 今回の議論がこれから経営の道を志すことを決断する一助となることを願います。

(塾頭補佐 大谷智仁)

 

 

第3回講義

  • 日時: 2012年3月10日(土) 13:30-17:00 (懇親会あり)
  • 場所: 大阪大学中之島センター 2階会議室1
  • 講演者: 梅村聡 (参議院議員、医師)(科学者維新塾塾長)
  • 講義題目: 医師から国会議員へ
  • 司会: 大橋慶郎

 

第3回講義は無事、終了いたしました!総勢35人近くの方にご参加頂きました、みなさまお疲れさまでした。

 第1部前半講義は、科新塾塾長でもある梅村聡先生に、「医師から国会議員へ」というタイトルでご講演いただきました。政治家になるまでの経緯や体験についてのお話、現代の情報化社会や政治のはらむ問題についてのお話、次世代を担う個々人の心構えについてのお話、をして頂きました。 

 後半は輪になって、塾生の本音を引き出すために、梅村先生からの質問「なぜ博士後期課程に進んだか?」「今、高1生だったらどうするか?」について語り合いました。そして場の雰囲気が温まった所で、前半講義の内容を踏まえた質疑応答および議論を行いました。政治家の方と直接話し合う機会が少ないということもあり、「政治のここはどうなっているのか」という質問・意見が活発に飛び交いました。第2部でも梅村先生を交え、政治についての話で盛り上がりました。多くの塾生が政治に興味関心をもっていることに気づくことができたため、今後の活動へのモチベーションにもつながり、よかったと思います。

(塾頭補佐 大橋慶郎)

 講義後のアンケートでは、現役の国会議員の話を初めて聞いたという声が多く、普段は知ることの難しい現場の話を聞けて大変刺激になったという声が多く聞かれました。政治家へのイメージが大きく変わったという方々もおられ、梅村先生の熱意が十分に伝わったのではないかと思います。一方で、さらに政治を勉強したい、もっと議論がしたかったという声も多く上がっていましたので、まずは勉強会という形でこの熱気をそのままに今後の活動にも活かしていきたいと思います。

(塾頭 岡野真之)

 

 

第2回講義

  • 日時: 2012年2月18日(土) 13:30-17:00 (第2部17:30-19:30)
  • 場所: 大阪大学中之島センター 9階会議室1,2
  • 講演者: 伊藤真之 (神戸大学教授、神戸大学サイエンスショップ副室長)
  • 講義題目: 市民と科学者の対話と協働を促すしくみづくり
  • 司会:近藤洋隆

 

第2回講義は無事、終了いたしました!総勢40人近くの方にご参加頂きました、みなさまお疲れさまでした。

 講師の神戸大学発達科学部の伊藤真之教授には「市民と科学者の対話と協働を促すしくみづくり」というタイトルでご講演いただきました。前半の講義パートでは発達科学部のヒューマンコミュニティ創成研究という理念から始まり、市民の科学、サイエンスカフェ、 科学コミュニケーションに関する地域ネットワークづくりなどについてご説明いただきました。その中の「市民の市民による市民のための科学("science of the people, by the people, for the people")」というフレーズが印象的でした。また具体的な活動として、 サイエンスカフェ神戸や神戸大学サイエンスショップ、JSTの支援による地域ネットワーク、市民科学のためのオンラインジャーナルをはじめ、 様々な実践的な活動を紹介していただきました。

 後半の議論パートでは約35人の参加者で輪を作って意見や疑問をぶつけ合いました。議論に使おうと用意したホワイトボードには伊藤教授への質問がびっしりと書き込まれ、関心の高さを感じました。活発に意見も飛び交い、その後の第2部(懇親会)でも熱は冷めやらぬ様子でした。今年の科新塾は始まったばかりですが、多くの塾生の意見を聞くことができてよかったです。

(塾生 近藤洋隆)

講義後のアンケートでは、サイエンスコミュニケーション・科学コミュニケーションに対して、これまで自分が抱いていたものとは違う視点が講義および議論により得られて刺激になった、という感想が多く見受けられました。またサイエンスカフェについて初めて具体的な活動内容を聞いたという声も多くありました。今回の講義でサイエンスカフェに興味を持った塾生も多く、今後、実際に参加したり主催することを通して、より深く科学コミュニケーションに対して取り組むことに繋がるのではないかと思います。後半の議論では新しい試みで多くの塾生の意見を引き出せたと思いますが、人数も多く議論が発散したり論点がずれたりと、今後の運営への課題もありました。次回はテーマを絞って塾生同士の議論をより活発なものにしたいと思います。

(塾頭 岡野真之)

 

 

第1回講義

  • 日時: 2012年1月21日(土) 13:30-17:00 (第2部17:30-19:30)
  • 場所: 大阪大学中之島センター 9階会議室1,2
  • 講演者: 河田聡 (科学者維新塾塾長)
  • 講義題目: 「私が科新塾を始めた理由」

 

第1回講義は無事、終了いたしました!総勢30人弱の方にご参加頂きました、みなさまお疲れさまでした。

 前半は塾長・河田聡先生から「私が科新塾を始めた理由」として、人・組織・会社・学問の寿命の話、科新塾のモデルとしての適塾の話、そして博識・博愛・博覧の士としての博士の話、をしていただきました。後半は、駆けつけていただきました塾長・梅村聡先生のご挨拶と、塾頭・岡野真之からの年間スケジュール・運営方針・企画案・協力者募集などの説明、輪になっての参加者全員の自己紹介を行ないました。講義後の懇親会(第2部!?)にも多くの方にご参加頂き、オブザーバー参加いただきました合同会社CPPの村磯様、馬場様、読売新聞社の斎藤様も含め、各所で議論が白熱していました。

 講義の感想としては、「理系博士=研究者と考えていたが、視野が広がった」「組織や会社の寿命という考え方は自分の中で新しく刺激的でした」「博士は資格というのが心に響いた」「モチベーションが上がった」というもので、ほぼ全ての方に満足して頂けたようです。一方、「日本の新しい時代を始めるにはどういうキッカケが必要か?」「今後どのように独立自尊していくか?」「今までのものを壊すには具体的にどうするか?」などの疑問が生まれたようです。これらの問題意識を持ちながら、1年間の活動を通して自分なりの、科学者維新塾なりの疑問への解決を目指して行きたいと思います。

 今期はこれからいよいよ1年間、新しいメンバーで活動を開始して行きます、今期の運営コンセプトは「動く!」で、どんどん活動を形にしていこうと思います。

第3期講義議事録


第10回 塾生発表会 及び 修了証授与

  • 日程:2011年11月12日(土)
  • テーマ:科学者維新塾に参加して描いた将来の夢
  • 会場:中之島センター9階講義室1,2

 第3期科学者維新塾の最終講義が、11月12日に行われました。沢山の夢や選択肢を主体的に描いて欲しいという思いから、テーマを「科学者維新塾に参加して描いた将来の夢」とし、塾生1人1人が発表しました。注意事項として実現不可能な夢でもよいことをあらかじめ伝えており、夢のある自由で素直な発表を聞くことができました。質疑応答・コメントの時間には、「じゃあ僕と一緒にやろうよ!」と自分のビジネスプランや第4期の科学者維新塾に巻き込もうとする姿が印象的であり、活発に議論することができました。 

今期は、もっと塾生同士の議論を活発にしたいという思いから、熟議やディベート・サマースクールなどの新しい取り組みを行ってきました。また、講義運営にスタッフだけでなく塾生を巻き込んだことで、塾生が主体的に塾に参加できたように思えました。全ての塾生を巻き込むまでには至らず、具体的な行動までは繋がらなかったかもしれません。しかし、1つの考えに縛られない発想や、行動しようと思えばできるのだという可能性、この先も続いていく仲間との繋がりを得られたことは、塾生にとって大きな収穫となったのではないかと塾生発表会で感じました。今後の活躍が楽しみです。 

 本講義にご参加・ご協力いただき、ありがとうございました。 

(塾頭補佐 吉田恵美)

 

 

第9回 理系博士を取って科学技術をマネジメントする! 

 

  • 日程:2011年10月22日(土) 
  • 講師: 安井 あい(やすい あい)NEDO 
  • 会場:大阪大学中之島センター

ご参加いただきましてありがとうございました。 

 

無事終了いたしました。

 

 

第8回 政治家(理系博士を取って政治家になる!)のご報告 

  • 第8回講義司会:水野有智
  • 日程:2011年9月17日(土) 
  • 講師:梅村 聡 (うめむら さとし) 参議院議員 
  • 会場:大阪大学中之島センター7F会議室3

 科学者維新塾中之島第8回講義は、参議院議員の梅村聡先生を講師にお招きして、“理系博士を取って政治家になる”というタイトルでご講演いただきました。今回の講義では、普段は遠い存在である政治家という職業を、より現実的なキャリアパスの一つとして捉えられるようになることを目的に設定しました。司会者としては、国会議員という普段お話を聞く機会がない職業の方であるという以上に、理系の人間として専門外のキャリアパス選択された先輩の、また、公人としてだけではなく、私人としての梅村先生の生の声を期待して講義に臨みました。講義は2つのパートに分け、 1つは梅村先生自身の目から見た政治家という職業について、もう一つは理系の人間が政治家という職業を選択した場合にどのような利点・難点があるのかについてお話しいただきました。今回は、この2つのテーマについて、個人的に印象に残ったトピックと、それについて自分自身が考えたことを報告したいと思います。 

第1テーマ 政治家とはどのような仕事であるのか、梅村先生の経験から 

先生にはまず、議員の1日と1年のスケジュールについてお話いただきました。その中で、選挙区制と議員のあり方が深く関連しているということを指摘されていました。大まかに言うと、現在の小選挙区制は選挙区が小さくなって選挙にかかる費用が低減されるメリットがある代わりに、同一選挙区から当選できる候補者の人数が少ないために新人候補が出てきにくいデメリットがあること、昔の中選挙区制はその逆であったということでした。小選挙区制では、選挙区に「顔を売る」ためにかかる労力が大きくなるために、国会会期中以外において重要な「勉強」の機会が失われがちになってしまうことを指摘されていました。先生ご自身としてはこの点から、中選挙区制の方がよりベターなシステムであると考えておられるようでした。先生によると、この時間の使い方は各人の裁量であり、1日の過ごし方に関しても、本会議だけ出てあとは家で寝ていることも可能と言えば可能であり、国会議員には高い自律の能力が必要とされるということでした。 

 一般的な感覚として、「コネ」「権力関係」といったものが幅を効かせている印象を持っていましたが、梅村先生曰く、本会議・委員会といった会合の場において示した能力(議員に求められる能力については後述)、存在感といったものがかなりフェアに評価されるということでした。この点は自分も意外でした。ちなみに、政治家は「やくざ」な職業のようで、信用能力がないために銀行からお金が借りられない。まさに「議員を辞めたらただの人」であるようです。 

 第一テーマについて個人的に考えたことは、議員の能力と選挙のミスマッチというものでした。会社などの通常の組織においては、多少恣意的な部分はあっても基本的に能力とその組織の中に所属できるか否か、その組織の中でのポジションの間には強い相関がある物と考えられます。しかし、国会議員においては、議員としての優秀さと、選挙に当選するかどうかの相関が弱いように感じられます。この原因として、普段の議員の活動を有権者が知る機会、メディアが存在しないことがあると個人的には思います。この点をネットを通じた政治的活動は補完しうると考えられるのですが、どうしてこの動きは進まないのでしょうか? 

第2テーマ 実際に政治家になるにはどうしたら良いのか? 

梅村先生の場合、小選挙区の「席」がたまたま空いたために国会議員になるチャンスが得られました。小選挙区制のために、普通は国会議員になるのは非常に難しい。逆に地方議員(~市議会議員)くらいだったらかなりなりやすいとは考えられます。特に、「旧帝大の博士後期課程卒」という学歴は大きなハクになることと思います。選挙に出ると決めたはいいが、とにかく金がかかるというのが梅村先生の第一印象でした。政党の公認が得られる場合はいくらか出してもらえ、融資を受けられるとのことでしたが、やはり持ち出しの部分がいくらかあるようです。 

理系博士のキャリア・能力が特に生きてくるといったことはあるかと言われるとあまりないと先生は考えておられるようでした。自分のバックグラウンドに関係する法案、委員会については、代表に選ばれやすい部分は確かにあります。しかし自分の分野外のことであるからこそ、クリティカルな指摘ができる場合もあるため、専門性が一概に生きるとは言い切れないかもしれません。法律の条文を読んで解釈できる必要があるかというと、その専門の職員の人がいるので特に困ることはないようで、専門外の法案についても、議員になってから勉強するので特に問題はないそうです。梅村先生ご自身も、専門に近い医療制度や生活保護関連の法案だけでなく、自然エネルギー施設の許認可問題など、専門外のお仕事もされていました。 

結局のところ、議員に求められる能力は、専門性というよりは議論の要点を見いだして上手く説明する能力だったり、上手に議事進行を行う能力ということでした。そして、専門的なことを利害関係なく質問できるコネクションを持っていることは、中立的な立場から活動を行う上で非常に強力な力となると教えられました。このパートで個人的に考えたのは、「選挙と金の問題」。選挙に出るのにとにかくお金がかかるというのは、若い人が議員になるうえで大きな問題になるように思われる。どうにかならないものでしょうか? 

総括 

 今回の講義は、塾生にとって国会議員という普段あまり触れ合うことのない世界の方をリアリティを持って認識できるようになった点で非常に良い機会となりました。しかし、僕たちがいきなり国会議員になるということは相当困難であり、また強かな作戦が必要であるように思えました。梅村先生には、講義後の懇親会にも参加していただき、政治家を目指す後押しをいただきました。塾生が政治家になりたいと思ったとき、この塾のネットワークも大いに利用できることと思います。政治家になる道が困難であっても、その志を持った塾生には強かにそのチャンスをうかがって欲しいと思います。そうでなくても、そのチャンスが自分に巡ってきたときには、その役割を引き受ける覚悟くらいは固めておいてもいいかもしれないと思います。少なくとも私たちは、政治についてもっと主体的に情報収集をして、考えて、時には発言していくべきではないでしょうか?日本の政治や社会にはまだまだアップデートする余地があって、民主主義国家においては幸いにして、僕たちにそれを実行するための力が小さいながら与えられています。 

本講義にご参加・ご協力いただいき、ありがとうございました。

 

 

第7回 塾生による熟議(第5回/第6回講演を受けて)ディベートの報告 

  • 日程:2011年7月23日(土)
  • 会場:大阪大学中之島センター7F会議室3

科学者維新塾(中之島) 第7回は,第5回 『科学者(石黒浩先生)』と第6回 『サイエンスコミュニケーター(内田麻理香先生)』の講演内容をより深掘りして考える機会としてディベートを行いました.各回の講演会後の塾生の感想や各塾生の日頃から感じることを違った視点で考えるため,ディベートテーマをそれぞれ普段とは異なる考え方ができるように以下のように設定し,ディベート後のディスカッションにおいて,勝敗だけでなく,そこから見えてくる多視点からの考察を塾生全体で考えることが出来ました. 

  1. 科学者:任期付き雇用の科学者は、教育より研究を優先すべき
  2. サイエンスコミュニケーション:サイエンスコミュニケーションは社会に必要ない

初回のテーマ1.では, 

普段ディベートをする機会が少なかった塾生にとって,多角的な分析と戦略を練ってディベートを行うことは難しかったようです. しかし,『科学者とは何なのか』,『科学者が行う教育とはどのようなものなのか』,『任期付き雇用としての科学者はポストドクターだけなのだろうか』,『任期付きで雇用されている者は,果たして科学者たりえるのか』などディベートとその後のディスカッションにおいて普段意識的に考えることがなかった事案について考え,盛り上がった議論をすることができました.

結果:  判定者(観客):7名全票一致で肯定

テーマ2.に関しては,

 『サイエンスコミュニケーションの必要性』について、第6回の講演会を通してより深く認識することができたとの感想が多かったため,敢えてその反対の立場を肯定側として,批判的に議論することを試みました.非常に熱心に準備をしていたこととテーマ①の様子を見たことで,より具体的なディベートになりまいた.しかし,ディベート内容から『反論は得意だが,主張ができない』と非常に的を射たコメントを頂きました.今回の講演会を通して,各塾生がそれぞれ問題意識を持って今後より良い講演会にして頂けると感じました.

結果:  判定者(観客): 7名中6名肯定/1名否定

(ファシリテーター 石田 周太郎) 

 

 

 

第6回 「これからのサイエンスコミュニケーター」の報告 

  • 日程:2011年6月18日(土)

  • 会場:大阪大学中之島センター7F会議室3

  • 講師:内田 麻理香(うちだ まりか) サイエンスコミュニケーター

 第6回目の講義は、“これからのサイエンスコミュニケーター”と題し、講師に内田麻理香先生をお招きし、先生の経歴、サイエンスコミュニケーションの定義や背景と実践についてお話頂きました。 

 最近は3.11の震災の影響でメディアでも科学者や技術者といった専門家の露出が目立っており、我々科学技術従事者は特にサイエンスコミュニケーションのあり方について考えさせられる場面が多いと思います。 理系博士が社会に貢献する活動として、少し漠然として掴みどころのないサイエンスコミュニケーションに実感を持ち具体的に議論する、というのが今回の講義の目的でした。  “サイエンスコミュニケーション”に興味を持っていらっしゃる方は多いようで、第一期/第二期に参加したOGも参加下さいました。更に女性の講師がお見えとの事で、女性が科学に携わっていくという実践モデルとしても興味をかき立てられる講義でした。

 内田先生の経歴はユニークで、一度博士課程を中退しサイエンスライターとして独立した後、現在改めて博士課程でサイエンスコミュニケーションを研究されています。また、博士中退後の専業主婦生活を送る中で、生活の中の出来事と科学を繋ぐサイト「家庭科学総合研究所」を開設されました。 学生結婚を機に “レールから外れた”自分をどのように売り込むか、初めから計画的にマーケティングポリシーを設定した事が現在の先生の市場価値を築くベースとなったようです。また科学に関心の無い人たちに科学を伝えるため、“科学”の枠を飛び越えた様々な試みにチャレンジしていらっしゃいます。先生曰く、「改めて人生を振り返ると無駄な事は一つも無く、不本意な生活や流れに任せた事、全てが現在の自分を形づくっている」との事でした。先生の行動力と緻密な戦略は是非我々も見習い、実践していきたい事だと感じました。

 サイエンスコミュニケーションの定義は、 「専門家でない一般の人に科学技術を伝えたり対話したりする、啓蒙でもなく教育でもなくコミュニケーション」です。現在、トランスサイエンス(科学によって問うことはできるが、科学によって答えることのできない問題群からなる領域)が顕在化しています。 科学を分かりやすく且つ正確に伝える事の難しさに関しては、我々はしばしば当事者側からも第三者側からも実感する問題であり、第3回講義(藤原洋氏)の冒頭でもサイエンスコミュニケーションにおける科学技術従事者の立ち位置に関して述べられていた事を思い出しました。 サイエンスコミュニケーションの実践では、感心の低い人や科学技術アレルギーを持つ人に対しては、興味を持ちやすい事をフックにし、科学をそれに絡める事で壁を越え、また科学という枠から越境できるのではないか、という事を内田先生は実践しているそうです。

 この日の講義形式は、おおまかに前半講義の後半ディスカッションという2部構成でしたが、講義が5分程早く終わり、その後から後半の時間にかけて談論が活発になされ、塾生の感心の高さが伺えました。また、今後の一般の方に向けたサイエンスコミュニケーションの広げ方について、塾生から答えの無い課題を扱ってみてはどうか、というような意見が挙がり、内田先生も「刺激になった」とおっしゃっていました。 理系人材にとってサイエンスコミュニケーションとは、あるにこした事はない十分条件で、その上で風当たりの厳しい現代社会において“社会を変革する”理系人材には必要条件となります。共に論究する事で具体的、実践的な感覚を共有できたと思います。

 本講義に際し皆様のご協力を賜りました事を心よりお礼申し上げます。

(第6回のご報告 司会担当 知念いち乃)

 

 

 

 

第5回 「 科学者としての生き方」の報告

第5回講義はロボット学者の石黒浩氏を招き、「科学者としての生き方」と題してご講演頂きました。 

 第2回の榎木英介氏、第3回の藤原洋氏がアカデミック以外を活動の主な舞台としておられたのに対し、今回はアカデミックの世界で科学者として多彩な活動をされておられる石黒浩氏にご講演いただくことで、塾生にアカデミックで生きるという科学者としての道を改めて考え直す機会にすることが目的でした。 

 今回の講義は、石黒先生のご要望もあり、これまでとは違いディスカッションを重視する形式で行いました。石黒先生とスクリーンを取り囲むように椅子をより近い位置に配置し、

講義中も質問を常に受け付ける、質疑応答を中心とした講義スタイルで行ないました。

 まず石黒先生からの「そもそも研究とは何か、という授業を受けたことがあるか?」という問題提起から始まりました。科学者は研究とは何かを知っている必要があるし、目指す者もそれを教えられる必要があるのではないか、ということで、塾生たちは冒頭から「研究とは何か」、「科学者とは何か」を深く考えさせられることとなりました。

 そして前半は「石黒先生のこれまでの歩み」というタイトルで、事前にこちらからお渡しした質問事項に答える形で、進められました。研究者としては自分の疑問に折り合いをつけずに疑問を持ち続けることが大事であること、研究とはこれまでになかった新しい分野を創り出すことであるから研究者に分野は必要ないことなど、ご自身の経験を踏まえて、科学者としてあるべき姿について熱弁をふるわれました。また研究には、何もないところから新しいものを生み出すという芸術的な要素や、できるかどうか分からないことにチャレンジするギャンブル的な要素があり、成功しか望まないような研究は研究ではない、とチャレンジの重要性を説かれました。

   次に自己紹介として、これまでの研究の説明をしていただきました。画像認識や人工知能の研究からロボットの研究に移り、当時の流行である産業ロボットではなく、日常生活で人と接するロボットの研究を始められ、そこで「人とは何か」という疑問にぶつかり、それまで見かけを問題にされていなかったロボット研究にあって、人間にそっくりなアンドロイドの製作に進まれます。その結果、アンドロイドを遠隔操作すると、周りの人はそこに本人がいると感じ、アンドロイドに触れられると操作者は自分が触れられるように感じることが判明します。これは人のアイデンティティーに関する古代からの哲学的問題が、ロボットという技術ができて初めて実証できるようになったことを意味します。また人よりも人らしい人を作る方向に研究が進み、遂には劇作家と協力して人間の俳優とアンドロイドが共演するアンドロイドを行われます。その結果、多くの人はアンドロイドに心を感じたということ、またアンドロイドを究極の人間、人を超えたような存在だと感じることも分かりました。近年では、同時に、どこまで要素をそぎ落としても人間らしさを感じるか、という研究にも着手され、人形型の携帯電話の開発を紹介されました。

   前半は石黒先生の広く深い講義に塾生の多くが内容を消化するのに精いっぱいな印象でしたが、後半からは塾生からも適宜、講義内容に即した質問が出ており、石黒先生の提案で塾生も含めてマイクを使わず、直接、自分の声で議論をしたこともあり、とても熱気にあふれた講義となりました。全員が同じ場を共有しているという一体感が強まり、全員が前のめりで石黒先生の言葉に聞き入り議論を深めるという、「塾」の名を体現する回になったのではないかと思います。

   最後には「科学者としての哲学・人生観」というタイトルで、こちらの事前質問にも答えていただきましたが、社会貢献できなければ研究として意味がない、という趣旨のことをおっしゃられていたのが印象的でした。自分の能力や興味を全て注ぎ込み、かつ社会貢献もするという、アカデミックで科学者として生きる道に、多くの塾生が大変な刺激を受けたようで、講義後のアンケートでもほぼ全員が講義に満足し、半数以上が大変満足、という結果になりました。

   石黒先生には講義後の懇親会にもご参加いただき、ざっくばらんに多くのことを塾生と議論していただき、最後には石黒先生を中心に、塾生の輪ができていたのが非常に印象的でした。科学者になりたいという気持ちが強まったという学生の塾生もおり、今回の講義が塾生たちの科学者観に大きな影響を与えたのは間違いないようです。ご協力いただいたみなさま、ありがとうございました。            

 (第5回のご報告 司会担当 岡野真之)

日程:2011年5月21日(土) 

会場:大阪大学中之島センター9F会議室1,2

講師:石黒 浩  大阪大学大学院基礎工学研究科システム創成専攻 知能ロボット学研究室 教授

 

 

 

第4回熟議の報告

  • タイトル 「塾生による熟議(榎木氏/藤原氏の講演から新たに考える事)」 
  • 日程:2011年4月16日(土)
  • 会場:大阪大学中之島センター7F会議室3

 

 第2期で、月1回3時間の講義の中では、講義で疑問に思ったことを解消できなかったり、具体的なアクションを起こすところまでは辿りつけなかったり、なかなかお互いがどういう事を考えていることを知っていくのは時間的に難しいという意見がありました。 

 そのため、第4回では、

これまでの第1回から第3回講義を元に

まとまって深く議論する時間を「熟議」として企画しました。

 全ての人が等しく発言できる機会を設けたいと考え、3−4名のグループに分かれて議論を行いました。

 また、共通の方向性を持って貰うために、会全体としての目標を立てて、初めに示しました。

  1. ディスカッションを通して塾生同士が、どのような考えを持っているのかを知ろう!
  2. 問題意識を共有しよう!
  3. 第1回から第3回講義について議論を深めよう!

 そして、この目標を達成するためには、お互いの意見を良く聞き、尊重することが必要ということを議論に先だってお伝えしました。

 また、全ての人が等しく発言することを実現するために、議論の方式には”KJ法の変法”を用いました。

 まず、与えられたテーマについて、頭の中に浮かんだことを1枚の付箋に1つずつ書き出しました。その付箋をグループに分け、そのグループ毎のキーワードを抽出し、さらに、全体としてのキーワードをまとめました。それを各グループで発表してもらいました。

 テーマは、

  1. 科新塾に参加した理由
    (ウォーミングアップを兼ねて、みんなの考えを知るために設定)
  2. 理系博士人材と日本社会の関わり方について、最も問題に思うこと
    (みんなの問題意識を共有するために設定したテーマ)
    この時点で3番目のテーマは発表しませんでした。その意図としては、解こうとしたら出ない難解な・率直な問題が定義されるかと考えたため
  3. 2で発表した問題を解決するために、今すぐ・5年後・10年後に自分ができること

1.では、多くの方が、出会いや人脈を求めて参加されていることがよく分かりました。社会で自分がどのように関わることができるかを自分の中で考えるだけでなく、他者とのコミュニケーションや化学反応の中で見出し、より現実のものに近づけたいというのが、全体としての想いのようです。最初のウォーミングアップで付箋の使い方に慣れ、みんな意見出しがうまくできるようになっていっていました。
2.では、全体として博士人材の社会との繋がり方と博士自身の自律心の双方に問題があるのではないかという結論がでました。それらの問題の解決策を3.で議論して貰いました。

 3. では、短期的と長期的な目線で具体策を出すことが難しく、議論が難航しました。河田先生から最も評価の高かったグループの発表では、博士自身が社会に情報を発信し続けていくことが、新しい社会を築くことに必須であるということを主張していました。

 今回、新しい試みとして「熟議」を行いました。参加者の満足度は高かったものの、運営側にも参加者側にもそれぞれ反省点が出ました。その反省点を次の熟議や講義に生かしつつ、具体的なアクションを起こすところまで奮起できればいいなと思います。

 協力してくださった方々やこの機会を与えてくださったことを心から感謝した一日でした。

 皆様、ご協力の程、ありがとうございました。

(第4回のご報告 吉田 恵美)

 

 

 

第3回の報告 

  • タイトル 「科学技術と起業を活かして世に貢献する。」 
  • 日程:2011年3月12日(土)
  • 14:00~17:00 (13:30~ 受付開始)
  • 場所:大阪大学中之島センター9F講義室1、2
  • 講師:藤原 洋 (ふじわら ひろし)

 

3/12(土) 科学者維新塾(中之島) 第三回講演会が開かれました. 

藤原洋氏をお招きし,「科学技術と企業を活かして社会に貢献する」と題して講演頂きました.

大学卒業後,IBMへの就職,転職,経験を積んだ後の起業などこれまでの経験された

キャリアとその時々で経験し,かつ考えた事を講演頂きました.

また,著書「科学技術と企業家の精神」にて記す,歴史上の産業革命に見られる科学技術(科学者)と

それを社会へと繋げた会社(企業家)の関係を講演頂き,

これからの日本には、博士級人材と企業家が導く日本発の「産業革命」が必要との主張を講演頂き,我々が

これから研究する上でもつべき感覚,あるべき姿など,ご参加頂いたオブザーバーの方々とともに忌憚なく,活発な議論をさせて頂きました.

まず,講演では,博士,特に理系人材の現状を藤原氏の視点での資料を基に,分析結果の説明と現状の課題を明確化して頂きました. 

そこから,過去の産業革命に見られる『科学技術と産業革命の関係(そこにみる科学者と企業家の役割)』から氏の著書にも主張されている

            『社会発展の原動力は,イデオロギーではなくテクノロジーである』

            『科学技術と技術者は,自然発生的に好奇心と探究心が芽生え,とんでもない発見と発明をしてしまうことがある.』

について説明頂き,これからの日本がいままでの「官主導・改良技術立国」から「企業主導・発明発見技術立国」へと変わるためnい理系博士・博士級人材がより自分と社会との関係について各自見つめ直し,科学者として,自分の研究の結果と社会との関わりを意識する必要があることをお話頂きました.

また,ご自身の起業後の会社経営(MBA,売却,買い戻し,etc)で経験されたことや利益を学術へ還元することでの社会貢献について講演頂き,

企業としての社会貢献の必要性とあり方をお話頂きました.

これを基に,企業家の社会貢献がどのようなものなのか,また企業家のモチベーションと起業の意義について,塾全体で活発に議論し,そこから,これからの研究について,企業家を巻き込んだ新しい研究の一つの形(新しい産学連携)について,議論に基づく新たな意識を塾生各自がもつことが出来たのではないかと感じる.

藤原氏には,講演会の後の懇親会にもご参加頂き,その場での更なる活発なご議論をしていただく誠にありがとうございました.

次回(4月16日)の科学者維新塾では,今回の講演会と前回の榎木氏の会に基づき,より塾全体で考える熟議を行います.

より活発な会になることを期待します.

皆様誠にご協力ありがとうございました。 

(第3回のご報告 石田 周太郎)

 

 

 

 

第2回の報告

  • タイトル 「これからの『理系博士の使い方』の話をしよう。」 
  • 日程:2011年2月19日(土)
  • 14:00~17:00 (13:30~ 受付開始)
  • 場所:大阪大学中之島センター3F講義室1、2
  • 講師:榎木 英介 (えのき えいすけ)

 

 第二回科新塾では、榎木英介氏を招き、「これからの『理系博士の使いかた』についての話をしよう」と題した講演を行いました。大学院中退、医学部学士編入、医師国家資格取得、NPO法人設立、といった多岐に及ぶ経歴をもつ榎木氏だからこそ語れる「博士の活かし方」についてお話し頂きました。 

 まず、博士のキャリアパスについては、「博士イコール研究職という固定観念に捕われ、近視眼的に研究職ポストを求める人が多い。しかし、むしろ博士の持つ問題解決能力を「研究者」としてのみ使うのはもったいない。自分の能力を活かすことができると思われる領域にどんどん挑戦していくべきである。ネットが発達した現代では、ブログ・twitter・facebookなど、情報発信ツールに事欠く事は無い。どんどんoutputしていくべきである。“alternative carriers in science”という本がある。自分の才能を行かせる分野はどこか、もっと幅広く世界を見るべきだ。終身雇用・年功序列といった形態はもう古い。偶キャリも人生、プロボノといった働きもある。博士は自由である。決まりきった「研究者」「会社員」といった人生を歩む必要は全くない。現在は特に、最先端科学 (cutting edge)を追い求める研究者と、土台を作る理科教育の間の「生活・地域に密着した市民科学者」がこれからは必要になってくる。狭い世界に閉じこもるのではなく、飛び出していくべきだ。」と榎木氏は説きました。興味を持ったものには何にでも自ら体当たりで挑戦してきた榎木氏の体験談に、今後のキャリアパスに不安を感じている塾生は非常に勇気づけられました。 

 また、科学政策については、「アメリカにはAAAS、EUにはeuroscienceといった、科学者の科学者による科学者のためのNPO法人があるが、日本には無い。科学者が自立するために、日本にもそういった組織を作るべきである。」と問題提起されました。 

 質疑応答では、現役会社員・大学教員・元会社員・現役学生、など様々なバックグラウンドを持った塾生がそれぞれの立場からの「博士の活かし方」について語りあいました。普段の生活では決して同じ場に集うことのない種々多様な方達の意見を伺うことができ、非常に有意義な会となりました。今後の講義も非常に楽しみです。 

 皆様、ご協力誠にありがとうございました。    

 (第2回のご報告  宮内 諭)

 

 

 

 

第1回の報告

  • タイトル 「理系博士が日本を救う。」 
  • 日程:2011年1月15日(土)14:00-17:00 (13:30より受付開始)
  • 場所:大阪大学中之島センター9F講義室1、2
  • 講師:河田 聡 (かわた さとし)

 

 河田 聡  氏 (大阪大学教授・理研主任研究員)から「理系博士が日本を救う」と題した講演がありました。 

 河田氏の経歴を通して、博士の過去と今を鑑み、理系博士の将来に対する過去/現在の考え方の違いを示すことで、人生における個人の積極的な選択に基づいた行動の推進を説きました.河田氏曰く,「科学者≠研究者」であり、人は対象は何であれ、根源的な欲求より本質的に研究者であり、探求者である.しかし、科学者(博士)とは、博愛・博識という文字にから見られるように、広く物事を知り、広く世の中の要求に応え・貢献する、もしくは貢献できる人物である。 

 福沢諭吉著 文明論之概略では「学者は世論をはばからず、異端妄説のそしりを恐れることなく、自分の思う説を述べるべきである。」とされ、科学者とは、異端妄説を云うことを恐れず、忍耐強く挑戦し続けることができる人物であり、現代に置き換えると、周囲の不見識による言葉に耐え、博士を目指し邁進する博士課程学生にあてはまるとしている.

 科学者維新塾は、幕末に緒方洪庵が開設した適塾を基礎とし、幕末という国の存亡をかけた動乱の中で開塾され、当時は異端であった蘭学塾『適塾』が輩出した塾生が、志高くかつ専門性、実学を踏まえ世に貢献した様を、福沢諭吉に焦点をあて説明しました。幕末動乱期の蘭学者は、まさに、平成の世の大きな転換期を迎えている現代と対比してみると、博士課程で日々研鑽を積んでいる学生と同じだと考え、今、まさに平成の維新志士として科学者が必要であると説きました。さらに理系博士が何者か、科学者が何者かを改めて考えました。博士とは、定職につかず(雇われず)、自らの名前で生きてよい、生きられると認められた人に与えられる「資格」です。福沢諭吉の説いた「国を支えて国に頼らず」「独立自尊」の志を胸に、理系博士こそが政治家、ジャーナリスト、起業家、小説家など幅広い分野で活躍できること、活躍してゆくべきであることを説きました。

 河田氏の講義内容を踏まえて、講義の後半は質疑応答を行いました。質問、コメントに留まらず、塾生から講師への反論も求めました。議論は予定されていた講義時間ではおさまりきらないほど、おおいに盛り上がりました。質疑応答の時間、そして講義後に行われた懇親会では塾生の自己紹介も行い、塾生同士の交流も活発に行われました。今年も非常に活発な塾生が集まっており、今後の講義も非常に楽しみな内容となりました。

皆様、ご協力誠にありがとうございました。     

(第1回のご報告  石田 周太郎)